医学をきずいた人びと―名医の伝記と近代医学の歴史〈下〉

医学をきずいた人びと―名医の伝記と近代医学の歴史〈下〉の詳細

下巻は19世紀から20世紀に活躍した医師を通して医学の急速な進歩について述べています。上巻は主に8人の医師に絞った解説でしたが、下巻では生物学者や科学者など多数の人物が登場します。以下に本書を構成する7項目について列挙します。1. 女性を死に至らしめる産褥熱の原因と予防法を発見したゼンメルヴァイス2．麻酔効果のある気体の開発と、その気体の外科手術への応用3. 白血病の発見と病気の出発点は細胞であることを突きとめたウィルヒョウ4. 手術後の創傷が化膿するのは細菌が原因であることを明らかにしたリスター5. アメリカの外科手術と医師の訓練法の改善と乳癌手術に貢献したハルステッド6. 心臓の奇形によるファロー四徴症の治療法を確立したタウシグとブラロック7．臓器移植に貢献した医師達と免疫寛容を発見した生物学者メダワーとバーネット麻酔物質の応用には4人の人物が関わっており（1842〜1846年）、その内3人の優先権争いの熾烈さと結果の悲惨さは、優先権争いの事例の中でも際立っています。また次のように興味深い逸話が多く紹介されています。1）局所麻酔として用いられたコカインの中毒性を知らずに遊びで吸引して破滅した医師達、2）鎮静剤サリドマイドが奇形児の原因になる事が明らかになった事がきっかけでアメリカの薬品試験規制が厳しくなった事、3）ペニシリンと同様、臓器移植における拒絶反応を抑えるシクロスポリンもカビから抽出された薬剤である事。